剣を振る時に話題になるのは、切るという感覚の話や、スピードの話が多いですね。
わかりやすいですし、剣術らしい感じがしますから、ある意味納得です。
ただ、はじめの間は「重さ」も重視したいものです。
剣の振りの重さの優位性
刃筋が通らず、上手く切れていないような剣の振りでも、尋常では無い程重ければ大きな優位性を持ちます。
重く剣を振れるという事は、腕の力や、体の力がしっかりと剣に乗っているという事です。
刃筋が立たないのは、両腕の操作、脱力などが上手くできていないからだと思いますが、まずは、しっかりと剣が振れる土台を持つという事を重視したいものです。
合気道では基本的に、受ける・受け流す・躱すの3つを中心に稽古します。
相手の剣が重すぎると、受ける・受け流し、の2つが使えない状況に追い込まれる事も考えられます。
これは、ものすごく不利なことなのです。
このような話をすると「なら躱せば良いじゃないか」と、躱す事を簡単に考える人がいますが、それも余程の稽古を積み重ねた人で無ければ口にできない言葉なのです。
躱す事の難しさを考える
躱すのがどのくらい難しいかを少しイメージしてもらうのに、上記の3つを習得するための練習の性質を「鍛錬」という文字で表現してみるとイメージが湧くかと思います。
- 受け・・・・・・・鍛80%錬20%
- 受け流し・・・・・鍛50%錬50%
- 躱す・・・・・・・鍛20%錬80%
こんなイメージですね。
要するに、躱す技術を身に着けるためには「練る」練習の割合が多いのです。
宮本武蔵は「鍛えるのは千日で、練るのは万日だ」と言っています。
練る性質の高い技術は、習得するのに10倍時間がかかるという事ですね。
ですから、躱す事を簡単に口にできる人というのは、相当な時間と労力を稽古につぎ込んだ人という事になります。
しかも、剣の斬撃というのは線で襲ってきます。
突きなら点なので、その位置を外すだけでも避けられますから、まだ躱しやすいのですが、線での攻撃は線上から体を全て捌かないと切られてしまいます。
線の角度、剣筋が変わらないタイミングなどを見極め、確実に体を捌かないと、躱したつもりが半身バッサリという事になってしまいます。
これは実に習得と表現が難しい技術ですから、本来なら受け止めたいところなのですが、相手の剣が重かったら普通に受け止める事が難しくなってしまいます。
最後は楽に振る
刃筋を立てて、切れ味鋭く、スピードを乗せて剣を振るには、結局のところ、力を上手に抜いて振る事が重要だと思います。
剣を持って力を抜けば、刃筋がどうなっているかの感覚が掴みやすいです。
コップをしっかり握れば、中のコーヒーが揺れてしまいますが、挟んで持てば中が揺れないのと似た感覚でしょうか。
剣の揺れを吸収する柔軟性のようなものが必要なのでしょう。
重い性質の剣を目指して充分に鍛錬をしておけば、力を抜く際にもおおいに役立ちます。
それなりに鍛えた状態から力を抜けば、脱力後の力もそんなに弱くはならないからです。
これも、大きなメリットと言えると思います。是非、お試しください。
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